ナオミ・クライン『NOでは足りない』トランプのショック政治に抵抗するために(2) バーニー、コービン、革新候補を押し上げる下からの反乱
新著『NOでは足りない』の発売日にDNに登場したナオミ・クライン。底抜けで危険極まりない大統領が、あと3年は国家を壊し続ける見通しなのですから、多くの人は気持ちが重い。いや、わかりますよ、その気持ち。日本だってあと四年、少なくとも2年後の参院選まではまだまだ壊れ続けていきそうです。どうすればこれに抵抗できるのか、彼女が大急ぎで書き上げた処方箋は、米国人でなくとも大いに参考になります。
ナオミ・クラインの新著『NOでは足りない』のインタビュー、パート2です。このところ幾つかの国の選挙で、従来の候補者とは違い明白な反緊縮政策を掲げた候補が、下からの民衆運動に押し上げられる形で予想外の大健闘を見せました。米国では民主党大統領候補の指名をめぐって本命とされるヒラリー・クリントンと熾烈な戦いを繰り広げたバーニー・サンダース上院議員。選挙後は民主党の執行部に入り、草の根キャンペーンで培ったネットワークを生かした活躍が期待されていますが、ここに来てトランプ政権の出現を許したのは民主党上層部の「完全な失敗政策」と明白に批判し始めました。英国ではメイ首相が仕掛けた不意打ち総選挙で、ジェレミー・コービンの労働党が若者から熱烈な支持を受けロックスター並みの選挙戦を繰り広げて大幅に議席を伸ばし、保守党を過半数割れに追い込みました。フランスの大統領選挙では左翼党のジャンリュック・メランション候補が、ラディカルな富の再分配を唱えて急速に支持を集め、極右の国民戦線を率いるマリー・ルペンに2ポイント差まで迫りました。いずれも政権には手がとどかなかったものの、この何十年「この道しかない」としてたとえ政権が変わっても続いてきたネオリベ政策に対し、ようやく本物の選択肢が明確に示されたことは大きな希望です。それを支えたのは既存の政党政治にうんざりした民衆の下からの反乱です。
日本でも遅まきながらようやく市民の力で押し上げられた政治勢力が生まれてきました。希望の種は蒔かれましたが、与党の圧勝でまだ等分は国会も国民も無視した国の破壊が続く見込みです。クラインも指摘するように、このまま経済や社会の破壊が進めばネオナチが台頭する土壌が整うことが心配です。(中野真紀子)
ナオミ・クライン(Naomi Klein):ジャーナリスト、『インターセプト』のシニア・コレスポンデント。『ブランドなんか、いらない』、『ショック・ドクトリン──参事便乗型資本主義の招待を暴く』、『これが世界を変える──資本主義VS.気候変動』などの著者。この番組が放送された2017年6月13日に新刊No Is Not Enough: Resisting Trump's Shock Politics and Winning the World We Need(『NOでは足りない──トランプのショック政治に抵抗し我々に必要な世界を勝ち取るために』)をリリースした。
字幕翻訳:デモクラシー防衛同盟
千野菜保子・仲山さくら・水谷香恵・山下仁美・山田奈津美・岩川明子
全体監修:中野真紀子