「気づいていないから問題になっていない」 子ども向けメディアにおけるジェンダー格差

2007/3/8(Thu)
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3
10分

 誰もが知っている「くまのプーさん」。でも、登場キャラクター9匹のうち、メスは1匹だけだと意識したことのある人は、どれだけいるでしょう?しかも、そのメスは、息子のルーをおなかに入れた母親カンガルーで、主体はいつもルーの方。映画『テルマ&ルイーズ』の主演女優ジーナ・デイビスは、子供向け番組におけるジェンダー格差に気づき、それをなくすのをめざして「シージェーン」というグループをつくりました。基金を集めて、子供向け映画・TV番組の中の男女別登場人物(動物を含む)を徹底分析した結果、一般映画の登場人物の75%が男性で、1990年から2005年に公開された上位100映画において、女性はわずか17%だったということがわかりました。女性登場人物の割合は、ここ15年間で進歩がほとんど見られなかったそうです。 しかも、唯一出てくる女性キャラクターは、男性で成り立っている世界を滅ぼすための登場人物だったり、いなくなって初めてストーリーが始まるという設定だったり…。 そんな例を面白おかしく混ぜながら、女優ジーナ・デイビスが、「シージェーン」結成の背景と目標を語ります。(メンフィスで行なわれたメディア改革会議での講演の収録です)

 分析結果をTVや映画の制作者に持ち込んだところ、制作者自身も唖然とするほど、全く気づいていなかったそうです。「気がつかないから問題になっていないだけで、小さい頃からジェンダー格差のメッセージを送り続けるのは大問題」と指摘するジーナたちの活動は、業界からも好意的に受け入れられており、何らかの結果を出していける可能性も大きそうです。

 そういえば、日本のアニメでも、女の子向けの番組の主役は当然女の子ですが、男女両方向けのものは、主役は男性、女性はその脇役、という設定が多いかもしれません(ドラえもん、アンパンマン、しまじろう、などなど)。

 日本は、「ジェンダー」という言葉を使うことにさえ目くじらを立て、教科書から消してしまうような内閣を持つわけですが、世界で言う「ジェンダー・バランス」「ジェンダー・フリー」の意味をもっと理解し、その観念についていけるような社会でありたいと思いました。(古山葉子)

* ジーナ・デイビス Geena Davis 
『トッツィー』('82)で映画デビューし、 1988年の『偶然の旅行者』で型破りな犬の調教師、ミュリエル・プリチェットを演じて、アカデミー賞に輝く。また、リドリー・スコット監督の『テルマ&ルイーズ』('91)ではテルマを演じてアカデミー賞及びゴールデングローブ賞にノミネートされた。また野球の名選手に扮した『プリティ・リーグ』('92)でもゴールデングローブ賞にノミネートされている。(www.asahi-net.or.jp/~rn6d-hnd/people/geena_davis.htm - 7k -より抜粋)子供向けメディアにおけるジェンダー・バイアスをなくすためのグループ「シージェーン」を主宰。

Credits: 

字幕翻訳:海谷菜央子
全体監修:古山葉子