ベトナム代表団 いまも続く枯れ葉剤「エージェント・オレンジ」の被害で米化学企業を提訴へ
米国はベトナム戦争で7千万リットル近くの枯葉剤を空中散布しました。ベトナム政府によれば、この薬剤のせいで300万人以上の人々が障害を負うことになったと言います。
枯葉剤の影響で結合体双生児として生まれたべトちゃん・ドクちゃんが、1988年に日本で分離手術を受けてマスコミで取り上げられたので、日本では枯葉剤について、ある程度知られているでしょう。でも、枯葉剤を直接あびた世代やその直接の子供だけでなく、3世、4世にまで深刻な被害が続いていることは、あまり知られていないのではないでしょうか?
昨年の6月に、ベトナム戦争後初めてベトナムの国家主席がホワイトハウスを訪問し、時を同じくして、枯葉剤の被害者の代表団も訪米しました。代表団は、ダウケミカル社やモンサント社など40社近くの企業を、有害物質の製造・販売のかどで告訴する手続きを進めていたのです。
このセグメントでは、ベトナム人2人と原告団弁護士たちに、ダイオキシンの毒が彼らの生活に及ぼしている影響や、この毒剤を製造した40近いアメリカの化学薬品会社を訴える背景について聞きます。
訴訟のポイントは、企業が、枯葉剤の製造過程の副産物として出るダイオキシンを規制する業界基準を無視して、過剰かつ不必要な有毒物質が含まれることを知りつつも、米国政府の要求にこたえてそのまま製造し続けたこと。「補償額の多寡は問題ではない。枯葉剤の影響による病であることを、まずは米国企業に認めてほしい」と弁護団は主張しています。
アメリカは戦時中の枯葉剤散布とその後の健康被害が結びつく科学的根拠がないとして、これまでも損害賠償を拒否し続け、今回の訴訟も、結局棄却しました。 このセグメントにゲスト出演したホンさんは、この訪米後まもなく、病状が悪化して死亡してしまいました(7月26日付のデモクラシー・ナウ!ヘッドライン・ニュースの中で紹介)。 ベトナム枯葉剤被害者救援および責任追及キャンペーン(Vietnam Agent Orange Relief & Responsibilty Campaign)のマール・ラトナー氏を初めとする支援者たちは、人生の最後の数週間をかけて訪米したホンさんの遺志を継いで、今後もアメリカ政府の誠意ある補償を求め続けます。
枯葉剤を浴びてベトナム人と同じように苦しんでいる、米国のベトナム戦争帰還兵も多くの訴訟を起こしています。1984年にはダウ・ケミカル社やモンサント社を含む6社の化学薬品会社が、示談で1億8千万ドルの支払いに合意したことがあるものの、訴訟に勝利したケースはいまだにありません。
* 枯葉剤の犠牲になった米国のベトナム戦争帰還兵を描いたドキュメンタリー『花はどこへいった』(坂口雅子監督)が、6月に東京・岩波ホールで公開されます。サイトはこちら。詳細は下をご覧下さい。(古山)
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『花はどこへいった』 (トランスビュー)
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関連情報
ドキュメンタリー『花はどこへいった』紹介
ベトナム戦争の枯葉剤が原因と思われる癌で夫を亡くした女性が、ベトナムで枯 葉剤の被害者らを取材。枯葉剤がもたらした惨状と、不自由な暮らしの中でもな お失われることのない人間愛を描いたドキュメンタリー。
坂田雅子監督が、フォト・ジャーナリストだった夫のグレッグを肝臓がんで亡く したのは、彼が入院してわずか2週間後のことだった。彼の死は、米軍兵士とし て送られたベトナムの戦場で浴びた枯葉剤が原因ではないか、と示唆された彼女 は、グレッグへの追憶と枯葉剤への疑問からベトナムへ行くことを決意する。そ こで彼女が目にしたのは、戦後30余年を経た今もなお、ダイオキシンを含んだ枯 葉剤が、ベトナムの人々にがんや生まれながらの障害を起こさせ、大地を蝕み続 けている現実だった。映画は、亡き夫への鎮魂にとどまることなく、苦難を引き 受けたベトナムの人々の家族愛と平和への思いを描き、戦争や枯葉剤被害の実態 に静かに迫る。(ドキュメンタリー/カラー・DV/日本/71分/STEREO/2007年/日 本語・英語・ベトナム語)
製作・監督・撮影・編集:坂田雅子
共同製作:ビル・メガロス 山上徹二郎 音楽:難波正司 撮影協力:フィ リップ・ジョーンズ=グリフィス 編集協力:ジャン・ユンカーマン 登場人物:グレッグ・デイビス フィリップ・ジョーンズ=グリフィス グ エン・ティー・ゴットゥ・フォン博士ほか
製作・配給 シグロ e-mail: [email protected]
(C)2007 SAKATA Masako
*グエン・モイ(Nguyen Muoi)とグエン・ティ・ホン(Nguyen Thi Hong):枯葉剤の被害者。40社近くの米国化学薬品会社を相手取った訴訟の原告
*マール・ラトナー(Merle Ratner):ベトナム枯葉剤被害者救援および責任追及キャンペーンのコーディネーター
*ジョナサン・ムーア(Jonathan Moore):枯葉剤訴訟の原告側弁護士
翻訳字幕:永井愛弓
字幕校正:田中泉 / 全体監修:古山葉子