アシャ・ハジと女たちが作るソマリアの「第6氏族」

2008/12/24(Wed)
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19分

石油タンカーを襲う海賊の出没で注目を浴びるようになったソマリア。しかし、10年以上も無政府状態が続き、戦乱によって国土が荒廃し、米国の支援でエチオピア軍が侵入してからの2年間は暴力行使が最悪の水準に達し、何百万人もの生活が脅かされていることは、ほとんど報道されてきませんでした。

人権団体HRWによれば、エチオピアもソマリア暫定政府も反政府勢力も内戦当事者はすべて、無差別爆撃や大規模な略奪やレイプを行なっており、首都モガディシュは住民の3分の2が脱出しました。ソマリアを対テロ戦争の主要な戦場と見ている米国は、民間人の犠牲には無関心のようです。

2008年のライトライブリフッド賞を受賞したアシャ・ハジはソマリアの女性活動家です。彼女は、「ここ2年ほどの大きな危機にも世界は知らんふりで、ソマリアは人道主義の網の目から零れ落ちていました。いま世界が関心を寄せているのは、ソマリアではなく、ソマリアの海における自分たちの権利です。ソマリアの住民より、ソマリアの海が大事なのです」と言います。海賊行為はソマリアの人道危機を放置した結果のネガティブな反応であり、ソマリアに平和と安定をもたらすことが解決の道だと言います。

ハジは「ソマリアの女と子供を救え」という女性組織の創始者で、特に戦争の問題を取り上げ、女性の観点からの和平を推進し、ソマリア女性の人権を護ることをめざし、女性の政治参加をうながすために教育機会の拡大と女性の経済的自立を助けています。2000年の和平会議で、女性のための「6番目の氏族」を創始し、初めて女性を和平交渉に参加させました。ソマリアは伝統的に氏族の結束が強い国ですが、男性中心主義の氏族制度の下では女性が和平会議に参加する余地がなかったためでした。

たしかに、女性の声を反映させない和平交渉は完全とはいえません。女性たちは昔から、平和を築くために活躍してきました。『ピースウィメン』の著者アン・ルーファが、歴代の女性ノーベル平和賞受賞者11人を列挙します。(中野)

1905年 欧州平和運動創始者ベルタ・フォン・ズットナー
1931年 米国のセツルメント運動創始者ジェーン・アダムズ
1946年 米国の婦人国際平和自由連盟の設立者エミリ・グリーン・ボルチ
1976年 北アイルランドのベティ・ウィリアムズとマイグレット・マグワイア
1979年 アルバニア生まれのインドの尼僧マザー・テレサ
1991年 ビルマの民主化運動指導者アウンサン・スーチー
1994年 グアテマラの先住民の権利運動リゴベルタ・メンチュー
1997年 米国の地雷禁止運動創始者ジョディ・ウィリアムズ
2003年 イランの人権弁護士シリン・エバディ
2004年 ケニアの環境保護活動家ワンガリ・マータイ

 

*レズリー・レフカウ(Leslie Lefkow) ヒューマンライツウォッチのソマリア地方調査団の主任。ソマリアに関する最新報告書『懸念が山積 ソマリアの戦争犯罪と荒廃』を出版した”

*アシャ・ハジ(Asha Hagi)「ソマリアの女と子供を救え」の創始者で、2008年ライトライブリフッド賞を受賞

*アン・ルーファ(Anne Ruffer) 『ピースウィメン』の著者

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字幕翻訳:中野真紀子