AT&Tがパブリックアクセスを差別待遇

2009/3/9(Mon)
Video No.: 
3
17分

通信業界大手AT&Tが米国全土でローカル局のパブリックアクセス・チャンネルを不当に待遇しているとして、地域メディア団体が抗議しています。争点となっているのは、パブリックアクセス・チャンネルの番組をAT&Tが顧客に提供する方法です。AT&Tは各放送局に個別のチャンネルを割り当てていますが、パブリックアクセス・チャンネルには番号の割り当てがなく、雑多なチャンネルと十把一絡げにされ、非常に複雑で時間のかかる方法でしか選局できません。地域情報や教育番組を担う地域の公共放送を推進する人々は、視聴者を著しく限定する不公正な制限だとAT&Tを批判します。

パブリックアクセスは日本ではあまり聞かない言葉ですが、ケーブルテレビ網が非常に発達した米国で成立した住民主体のチャンネルを確保する制度です。その背景には放送手段を持つことは市民の権利であるという考え方があります。ケーブル事業の許認可は地方自治体の権限ですが、自治体が認可を与える条件として3つの公共チャンネル(住民制作の番組、教育番組、自治体広報や警報)を無料で提供することを義務付けています。住民制作番組(Public Access)、教育番組(Education)、自治体広報(Government)の3つを合わせてPEGチャンネルと呼び、ケーブル放送の中では商業放送と同等の扱いを受けています。

特に住民が制作した番組を放送するパブリックアクセス・チャンネルは、番組制作支援のための設備や技術指導までも提供する仕組みになっており、このような形で市民にメディアへのアクセス権を保障していることが、地域社会の草の根民主主義を支える重要な要素になっています。デモクラシー・ナウ!も、全国のパブリックアクセス・チャンネルで流れることによって大きな影響力を持つようになりました。

しかし、今回の番組で紹介したように、規制緩和による大手通信業者のケーブル事業進出や、デジタル化による番組の制作配信方法の変革により、従来のような地域社会ベースの公共チャンネルの存続に赤信号がともっています。(中野)

*バーバラ・ポポヴィチ(Barbara Popovic) シカゴの非営利放送局シカゴ・アクセス・コーポレーション(CAN TV)の代表

*アン・フォルジャー(Annie Folger) カリフォルニア州パロ・アルトのミッドペニンシュラ・コミュニティ・メディアセンターの代表

*スー・バスキ(Sue Buske)サクラメントの通信コンサルタント企業バスキ・グループの代表。全米地域ケーブルプログラマー連合(コミュニティ・メディア連合)の元会長

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字幕翻訳:田中泉/校正:桜井まり子
全体監修:中野真紀子・高田絵里