G20とNATOサミットに抗議するヨーロッパの人々
ロンドン金融街で数千人がG20金融サミットに抗議
4月にヨーロッパで開かれたG20金融会議やNATOサミットでは、大規模な抗議行動が起こりました。従来の金融システムの復活に抗議し、NATOなんかいらないと叫ぶ人々。未曾有の経済危機に、英国やヨーロッパの人々は何を考えているのでしょう。
4月2日のロンドンG20首脳会議は、大規模な街頭デモがくり広げられるなかでの開催となりました。1日には数千人の抗議者がロンドンの金融街に押し寄せ、警官隊と衝突して数十人が逮捕されました。「ストップ・ザ・ウォー連合」(戦争やめろ連合)代表で長年にわたり英国の議員を務めてきたトニー・ベン氏に話を聞きます。
各国政府が巨額の助成金を投じて救おうとしているのは実体経済ではなく金融システムです。G20首脳はコンセンサスが成立したと言いますが、それは民衆が求めているものとは大きく隔たっています。これほど世論と政府の意見がかけ離れたことはかつてなく、しかも世界中でそうなっているとトニー・ベンは指摘し、この事態を経済のみならず民主主義の危機でもあると捉えています。
危機の対処に世界的な体制が必要だというのであれば、それは民主的に運営されなければなりません。そのためには監督をする人たちを世各国の民衆が自分たちで選出して、自分たちの利益に奉仕させるべきです。「これは”抗議”ではありません、”要求”です。進歩は国民が政府に”要求”して生まれます。戦争は許さない、失業も許しません」とベンは言います
NATOサミットに参加するオバマを待ち受ける大衆抗議
この後オバマ氏は独仏国境に向かいNATO(北大西洋条約機構)60周年サミットに参加しました。現地では、欧米20カ国以上から数千人が集まり抗議デモを計画しています。ライン川両岸には約2万5千人の警官が出動し、会合が開かれるストラスブール、ケールとバーデンバーデンの3都市を厳重警備しています。
抗議者たちの要求は、さし当たってはアフガニスタンからの即時撤退ですが、より根本的なところではNATOの解散です。1990年にワルシャワ条約機構が解散した後、NATOには明白な存在理由がありません。抗議行動を組織したアンドレアス・スペックは、NATOは民主主義を推進する軍隊を滮棒しているが、今では欧米資本主義の利益を世界中で守る帝国主義の軍隊だ、特に冷戦終結後は世界各地の紛争に関与しており、今回のサミットで議論される新戦略は世界的な軍事介入の機構へとNATOを発展させるものだと指摘します。初の大規模軍事作戦であるアフガニスタンが、NATOの将来を左右すると見られています。(中野)
*トニー・ベン(Tony Benn) 英国議会の長老の1人。国会議員を半世紀以上もつとめ、議員引退後は「ストップ・ザ・ウォー」連合の代表となった。4月1日トラファルガー広場で行なわれた反G20サミット抗議集会で.演説した。
*アンドレアス・スペック(Andreas Speck) 戦争抵抗者インターナショナル(War Resisters International)会員。NATO首脳会談への抗議行動を中心的に組織した人物の1人。
字幕翻訳:小椋優子/校正:永井愛弓
全体監修:中野真紀子