ホワイトパワーUSA 増殖する右翼民兵組織
バラク・オバマの大統領就任から1年、米国では人種偏見にもとづくヘイトクライム(憎悪犯罪)や脅迫事件が急増しています。100年に一度の不況と高い失業率がマイノリティや移民への反感に油をそそぎ、いくつかの州で右翼民兵組織が勢力を広げています。彼らは、移民たちの流入によって自分たちがつくった国が乗っ取られる、このままでは白人は滅びる、白人の国を取り戻そうと訴える「白人ナショナリスト」たちです。白人至上主義グループの内部に入り込んだリック・ローリーとジャッキー・スーヘンによる映像ルポ「ホワイトパワーUSA」(米国の白人至上主義運動)のダイジェストをお送りします。
そこに収められた様々な証言から浮かび上がるのは、米国の社会文化にあまねく存在する人種対立につけ込んで、不況をバネに穏健な右派大衆運動を取り込んで勢力を拡大し、政治の中央舞台に踊り出る機会をうかがっている急進的な白人至上主義者たちの存在です。こうした急進派を主流政界に導くための特急列車が「ティーパーティー」(独立戦争のきっかけになったボストン茶会事件にひっかけた名称)と呼ばれる大衆運動です。表向きは単なる愛国運動のようで人種主義的な主張をむき出しにすることはありませんが、この運動に担がれた候補たちの言動に注意してみれば、終末論的で過激な人種主義が見え隠れします。(中野)
★ ニュースレター第28号(2010.5.10)
*ホワイトパワーUSA(White Power USA), リックローリー(Rick Rowley)とジャッキー・スーヘン(Jacquie Soohen)によるドキュメント映像。完全版は Al Jazeera website または Big Noise films website.で視聴可能です。
*チップ・バーレット(Chip Berlet) 政治研究協会(Political Research Associates)の上級アナリスト 共著に Right-Wing Populism in America: Too Close for Comfortがある
字幕翻訳:大竹秀子/校正全体監修:中野真紀子・付天斉