ノーム・チョムスキー講演「中心の崩壊~ラディカルな想像力の再考」
もうじき来日するノーム・チョムスキー教授。3月5日と6日の二日間にわたって上智大学で行われる講演会は早々と予約締め切りになったようで、期待の大きさがうかがわれます。今の日本では、チョムスキー氏の講演もこれまでになく切実な響きを持って聞こえることでしょう。さて、そういうわけですから、デモクラシー・ナウ!でも、これを記念してとっておきの動画を配信します。
2010年3月21日に、ニューヨークで開催されたレフト・フォーラムでの基調講演です。内容は、いま世界中で進行している「中間層の瓦解」とファシズムを暗示するような民主主義の危機に際して、人々の力を結集する「ラディカルな想像力」を呼び覚まそうと訴えています。4年近く前の講演ですが、いま聞きなおしても十分に納得のいく内容です。
タイトルの「The center is not holding」は、講演の中でも繰り返し出てくるテーマですが、これはYeatsのThe Second Coming (キリストの再臨)という詩の一節を想起させます。第一次大戦直後に書かれたこの詩には
Things fall apart; the centre cannot hold
Mere anarchy is loosed upon the world,
と、中心部分が持ちこたえられず、旧来の秩序が崩れていく様が描かれています。その後に来たるべきsecond coming とは、ラディカルな変革がもたらす新世界秩序なのでしょうが、実際にはファシズムと再度の世界戦争が起こりました。なかなか奥の深そうなフレーズで、チョムスキーの意図をあれこれ考えてしまいますが、字幕ではとりあえず「中道の瓦解」としておきました。(中野真紀子)
*ノーム・チョムスキー(Noam Chomsky)マサチューセッツ工科大学名誉教授 言語学者 政治評論家 活動家
字幕翻訳:桜井まり子 /全体監修:中野真紀子