米軍内部告発者の逮捕、ウィキリークスは地下に潜る

2010/6/17(Thu)
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41分

政府機密漏洩と内部告発に対するオバマ政権の締め付けが強まっています。内部告発サイトの「ウィキリークス」は4月に、米軍ヘリがイラク民間人を襲い12人を殺す場面が映った米軍機密ビデオを公開して話題を呼びました。その他にもアフガニスタンの米軍による民間人虐殺のビデオや、国務省の機密外交公電を何万件も持っている模様です。米軍は、ウィキリークスに情報を渡した可能性のある陸軍技術兵ブラッド・マニングを逮捕しました。国務省の中東地域の電信網にアクセスして2万6千件の通信記録をダウンロードし外部に渡したと、他人に告白したためです。ウィキリークスの中心人物ジュリアン・アサンジは、ペンタゴンの捜索を逃れて行方をくらましています。両名に対する追及は、内部告発に対して歴代のどの大統領よりも強硬な姿勢を取り、厳罰で臨むオバマ政権の態度をくっきり浮き上がらせました。いまや漏洩情報を受け取った側も訴追の対象です。

これに対して非常に興味深い動きがアイスランドで起こっています。議会が全会一致で採択したジャーナリスト保護法提案(IMMI: Icelandic Modern Media Initiative)です。報道と表現の自由を保護する世界各国の先進的な法律を参考にした包括立法により、情報源の秘匿や内部告発者の保護を盛り込んだ、現代社会に即応する世界最高の情報開示法の制定をめざしています。アイスランドが世界中のPCサーバーやジャーナリストにとって解放区になるかもしれません。ウィキリークスの協力者で、この法案の中心的な起草者であるビルギッタ・ヨンスドティル国会議員の話を聞きます。

後半では、1971年に国防総省のベトナム機密文書(ペンタゴン文書)を暴露してニクソン大統領から「米国でいちばん危険な男」と呼ばれたダニエル・エルズバーグが、ウィキリークスによる機密公開の意義を語ります。国家反逆罪に問われることを覚悟で機密の暴露に踏み切った自分の例に続き、ペンタゴン文書に匹敵する重要国家機密を漏らす人物が現われるのを40年間ずっと待っていたと言うエルズバーグは、アサンジュとマニングを英雄と呼び、逮捕されたマニングに強力な弁護団をつけるための寄付を募っています。(中野)

★ DVD 2010年度 第3巻 「ウィキリークス」に収録

*ダニエル・エルズバーグ(Daniel Ellsberg)
1971年、国防総省スタッフとして作成にたずさわったベトナム戦争遂行に関する最高機密報告書(ペンタゴン・ペーパーズ)を暴露し、ニクソン政権によって指名手配された。
*グレン・グリーンウォルド(Glenn Greenwald)
Salon.com.の政治法律関係のブロガー
*ビルギッタ・ヨンスドティル(Birgitta Jonsdottir)
アイスランドの国会議員でウィキリークスのビデオ Collateral Murder.の共同プロデューサー

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字幕翻訳:大竹秀子
校正全体監修:中野真紀子・付天斉