サミットで600人逮捕 空前の警備支出で要塞化するトロント
6月末にカナダのトロントで開催されたG20サミットでは、600人を超える大量の逮捕者が出たことが報道されました。警察がプラスチック弾や催涙ガスなどを市民に向けて使ったのはトロントの歴史で初めてのことでした。トロントはた1万9000人を超える治安部隊を配備し、サミット会場となったトロントコンベンションセンターの周辺は約6キロにわたって防護柵が張り巡らされました。サミットの警備予算は約10億ドルと見られています。なるほど大量の逮捕者は巨額の警備投資につりあっているようです。サミット周辺で何がおこったのか、バンクーバー・メディアCOOPのフランクリン・ロペスがトロントの街頭からレポートします。
厳重な警備体制に挑戦するかのように、トロントでは一週間にわたって抗議行動が繰り広げられました。これまでサミットが開催された都市の中で最も文化の多様性があることがトロントの自慢ですが、トロント流の抗議行動はさすがにカラフルです。ゲイや障害者の人権を主張する人々が、同性愛者の移民を認めない国の政策に反対の声をあげ、先住民の運動家たちがオイルサンドの開発とパイプライン建設による居留区の環境破壊に反対しています。移民社会の貧困は放置され、移民の非白人女性の給与は白人男性の半分以下というカナダの人種差別とマイノリティ政策の実態を彼らは指摘し、文化の多様性を売りものにするトロント・サミットの偽善性をあばきます。
G20サミットが近づくにつれ警備は厳重になり、中心街を走るG20会場隔離フェンスの約5メートル以内に近づいたものは誰でも身分証明書の提示を求められ、令状なしに捜査され、逮捕者が出ました。やがて週末のデモの途中に、血気にはやった1000人ほどが分離行動を取り、フェンスに突進するという不測の事態がおきました。警察車両が炎上し、大企業の店舗のガラスが粉砕されました。これが一斉逮捕の口実となり、公園に集まっていた人々が500人以上逮捕されました。「暴徒化」が「鎮圧」を招いたというお決まりの図式ですが、ナオミ・クラインによれば、今回の事態は、途方もない巨額の警備予算を批判された警察が、支出を正当化して批判をかわそうと意図的に仕組んだ疑いがあるようです(中野)。
*バンクーバー・メディアCOOP(Vancouver Media Co-op)のフランクリン・ロペス(Franklin López)とドーン・パーリー(Dawn Paley)
追加映像:ブランドン・ジョールダン(Brandon Jourdan)
字幕翻訳:斎藤千紘
校正・全体監修:中野真紀子