地球工学は温暖化回避の切り札か、自然をあなどる愚策か?

2010/7/8(Thu)
Video No.: 
4
14分
地球の気温上昇はコペンハーゲン国連気候会議で抑制目標とされた「2℃」を大きく上回り、21世紀末までに4℃上昇するとい新予測がでています。でも気温上昇が2℃を上回ればもはや制御は不能となり、永久凍土の溶解など自然界の自律的な反応が始まり、破壊的な温暖化に進みます。国際関係と地政学の専門家グウィン・ダイアーは、温暖化が止まらない場合、大規模な飢饉や核戦争で大量の死者がでると予想し、それを防ぐ切り札として「地球工学」の活用を主張します。
気温上昇が自然の暴走にスイッチを入れる前に、地球を改造して温室効果ガス排出のレベルを低減しようとするもので、人工火山を作って大気を硫黄粒子で汚染する案や、海洋の肥沃化案、太陽光線を偏光させるアルミ箔を空に配備する案など、さまざまなアイディアがあります。しかし、地球工学への反対も高まっています。インド人環境保護主義者、科学者、哲学者、環境フェミニストのバンダナ・シバと、グウィン・ダイアーの熱のこもった対論をお届けします。インドの環境フェミニスト、バンダナ・シバの、熱のこもった論争をお届けします。
遺伝子組み換え作物や大企業による農業清算支配を批判してきたシバは、地球工学は科学の力で自然を屈服させようとする発想に基づいており、温暖化をもたらしたのと同じ発想で問題の解決をはかろうとする虚しい試みだといいます。小手先のトリックではなく、人間社会の対応力や柔軟性を高める本来の解決を追求すべきであり、金と力にまかせた資源の強奪で第三世界の生活を破壊してきた「環境帝国主義」を根本的に見直す「アースデモクラシー」の考え方に転換することが必要だと。
これに対しグウィン・ダイヤーは、そのような解決法では時間がかかりすぎ、自然の暴走を防ぐには間に合わず、膨大な死者が出るのを防ぐことはできないと反論します。強大な独裁権限なしに、現行の土地所有制度を根本から変えるアース・デモクラシーをどうやって短期間で推進するのでしょうか?(中野)
*グウィン・ダイアー(Gwynne Dyer)国際関係と地政学を専門とするフリーランス・ジャーナリスト。新刊書はClimate Wars: The Fight for Survival as the World Overheats(『気候戦争: 過熱する世界での生き残りをかけた闘い』)
*バンダナ・シバ(Vandana Shiva) 世界的に知られる環境問題の指導的活動家、思想家。物理学と環境学を教え、「科学・技術・環境科学のための研究基金」の理事をつとめる。原産の種子の使用と多様性を訴える「ナブダニャ(9つの種子)」運動を創始した。1993年に「もう1つのノーベル賞」を受賞した。『アース・デモクラシー―地球と生命の多様性に根ざした民主主義』など著書多数
Credits: 
字幕翻訳:川添峡子/校正:桜井まり子
全体監修:中野真紀子