WikiLeaks: モンサントの遺伝子組み換え作物を拒む欧州に米国が報復を検討
ウィキリークスがリリースした外交公電によると、フランスがモンサント社の遺伝子組み換えコーンを禁止したことを受けて、ステイプルトン元駐仏大使は2007年、EUへの報復を米政府に要請していました。ゲストのジェフリー・スミスによると、ブッシュ政権時代、フランスだけでなく駐スペイン米大使もモンサント社の幹部からヨーロッパの政治状況の説明を受け、GM普及策を一緒に練っていたのです。ウィキリークスの公表により、モンサント社の世界戦略とブッシュ政権のむすびつきが確認されたわけですが、このような強引な販売戦略によりモンサント社は米国産大豆のほぼ100%、トウモロコシは約70%を占めたといわれます。
しかしモンサント社は2009年、中国の安いジェネリックの除草剤に押されて売上が落ち込み、従業員削減に追い込まれました。
またラウンドアップに耐性のある雑草が出現、独占禁止法違反で米司法省の捜査も続いています。モンサント社は2009年、8種の遺伝子組み換えで収穫が増加するというふれ込みでスマート・スタックス(SmartStax)種子を売りだしましたが、収穫は予想を下回り、2010年の米国内の大豆とコーンの作付面積は目標を大幅に下回りました。
2011年3月末にはインドの有機農法を行なう農民と種子販売業者がモンサント社に対して集団訴訟を起こしました。この訴訟は、モンサント社から特許権侵害で訴えられないための自衛的訴訟ともみられています。
インドでは高額のGM種子を借金で買った農民が借金を返せなくなり、1997年から2010年までの農民の自殺者は22万人に上っています。
GM種子と在来種の交雑も大きな問題です。輸入の際に港周辺でこぼれた遺伝子組み換え種子からGM植物が自生している事実は日本でも確認されています。農水省がまとめた遺伝子組み換え植物に関する2006~2008年3カ年のセイヨウナタネ実態調査は「調査対象とした12 地域すべてで生育が見られ、このうち、遺伝子組換えセイヨウナタネの生育は、清水港、大阪港、宇野港及び戸畑港を除く8地域で見つかった。」としています。
モンサント社は米政府の後押しを受け、種子に知的財産権をつけることによって在来農法を駆逐し、農民を依存させ、世界の食糧資源を牛耳りました。遺伝子組み換え食品を含まない食品を探すことは至難だとさえいわれています。しかしいくら種子を製造しても、それを蒔き、育てる人がいなくては食糧にはなりません。遺伝子組み換え作物は食糧危機対策としても宣伝されましたが、農民を食いものにするモンサント社は逆に食糧生産を根本から弱体化させ、取り返しのつかない危機を招いているのではないでしょうか。種子は生命の源です。組み換え遺伝子を商品化し、生物の多様性を脅かすモンサント社の罪はたいへん重いと言えます。(桜井)
*ジェフリー・スミス(Jeffrey Smith)インスティチュート・フォア・リスポンシブル・テクノロジー (Institute for Responsible Technology)の事務局長。『偽りの種子―遺伝子組み換え食品をめぐるアメリカの嘘と謀略』と Genetic Roulette: The Documented Health Risks of Genetically Engineered Foods(『遺伝子ルーレットGM食品の健康リスク』)の著者.
字幕翻訳:小椋優子/校正:桜井まり子
全体監修:中野真紀子/サイト作成:桜井まり子