公共支出の大幅削減にロンドンで50万人が抗議デモ

2011/3/28(Mon)
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3月26日ロンドンで50万人を超えるデモ行進が行われ、戦後最大となる公共支出の削減に抗議しました。英国では昨年5月に13年ぶりの政権交代で保守党と自由民主党の連立政権が成立しました。新政権がまっ先に掲げた重要課題は、GNP比で1割以上に達した財政赤字への取り組みでした。そのために政府が打ち出した大胆な緊縮政策は、医療も教育も社会福祉もあらゆる公共サービスを縮小し、30万に及ぶ公共部門の雇用をカットするというものでした。デモの引き金となったのは、このような計画を進める一方で、法人税の減税試算が示されたことでした。問題は緊縮財政だけではなく、負担の不公平と極端な富の集中です。中流階級から下の人々には社会福祉の削減と増税が重くのしかかりますが、企業や投資家は税負担を軽減されるのです。大金持ちは税金を払っておらず、金融危機を引き起こして財政危機の原因を作った人々がますます富を溜め込む仕組みになっています。

ここで注目される動きが、アンカット運動です。巨額の収益を上げながら税金逃れをしている企業を名指しで糾弾します。例えばボーダフォンは、ドイツの移動通信企業マンネスマンを買収したときに支払うべきだったとして英国政府から60億ポンドの追徴課税を受けていましたが、大企業を優遇する保守党が政権についたとたんに追徴取り消しになりました。これによって失われた税収が、結局は公共サービス削減のかたちで庶民に降りかかってきます。そこでボーダフォンの本店で座り込みをして税金の支払いを要求する人々が現れると、この運動は人々の大きな共感を呼び、またたくまに英国各地に広がり56都市でボーダフォンの店が占拠されました。アンカット運動は米国にも飛び火し、ベライゾンやバンク・オブ・アメリカなどに抗議行動が行われています。

10月3日現在、米国では2週間前に始まった「ウォール街の占拠」デモが急速に拡大しています。ここにいたるまでの前段階として、半年前にロンドンで起きた大規模デモを振り返ってみましょう。(中野真紀子)

*ブランドン・ジョルダン(Report by Brandon Jourdan)マリアンヌ・メクルバー(Marianne Maeckelbergh)と共に.ロンドンの街頭からビデオ報告
*ヨハン・ハリ(Johann Hari) 英国インディペンデント紙のコラムニスト
*アリソン・キルケニー(Allison Kilkenny) ニューヨークのシティズン・ラジオ(Citizen Radio)の共同司会者。『ネイション』誌のブログで米国のアンカット運動(US Uncut) について報告

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字幕翻訳:田中泉/校正:桜井まり子
全体監修:中野真紀子/Web作成:丸山紀一朗