9.11のTVニュース・アーカイブ: 3000時間分の映像がオンラインで

2011/8/24(Wed)
Video No.: 
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16分

テレビ報道は私たちの現実認識に大きく影響し、集団的記憶として刻み込まれます。でも、そうしたメカニズムは十分に解明されてきたとはいえません。実際に過去のTVニュースを参照して比較検証するためのツールがなかったからです。米国では9.11同時多発テロから10年目に、インターネット・アーカイブ事業の先駆者2人が野心的なプロジェクトを立ち上げました。『9/11理解 テレビ報道アーカイブ』(Understanding 9/11: A Television News Archive)は、2001年の9月11日から15日まで放送された米国内外20局の延べ3000時間にわたるニュース映像を集め、さまざまな角度から検証できるように重層的にカタログ化して、インターネットで公開されています。

そこにはツインタワーが襲われた直後のビルの炎上や、崩壊の瞬間の逃げ惑う人々の姿が記録され、全体状況がつかめず目の前の映像に仰天したアナウンサーたちの、その場限りの発言が、言いっぱなしのまま洪水のように押し流されていく様が見て取れます。こうしたものの一部が切り取られ、繰り返し流されることによって人々の意識に「出来事」として定着します。リアルタイムの発言を全体の流れの中で検証することによって、こうした「出来事」がいかにして共通認識となっていったかががわかり、「出来事」の形成のメカニズムを解き明かすことができます。

現代社会に生きる私たちは、良かれ悪しかれテレビ報道を通じた世界認識から逃れることはできません。そうであれば、報道映像のアーカイブ化と比較検証を可能にする検索参照ツールの充実は、正確な情報の認識と判断のために当然必要になってくるはずです。日本でも、原発事故関連報道の問題点などが指摘される中、テレビのニュース報道を網羅的にアーカイブする事業にチャレンジする人が誰か出てきてほしいものです。(中野真紀子)

*ブルースター・ケール(Brewster Kahle)ITエンジニア、活動家、デジタル図書館を運営。デジタルテキストを永久保存するネット上の公開アーカイブを作成する集団Open Content AllianceやサイトInternet Archiveの創始者。最近は、紙の書籍そのものの保存も手がけており、すでに50万冊を収集している。2010年にZoia Horn Intellectual Freedom Awardを受賞。Utne Reader誌によって、「世界を変える50人」に選ばれた。
*リック・プレリンガー(Rick Prelinger)映像アーカイビスト、映画作家

Credits: 

字幕翻訳桜井まり子/全体監修:中野真紀子/ウェブ作成:丸山紀一朗