ヴィジャイ・プラシャド:軍事介入は、シリアの殺戮と悲惨を本当に救うのか?リビアへのNATO攻撃の検証が先決
リビアの40年に及ぶカダフィ政権を打倒した蜂起から1年。解放の喜びもつかの間、リビアは今も地域と派閥によって深刻に分裂した状態です。国内には500以上の武装集団が存在し、拷問や人権侵害は今も後をたちません。そんな中、シリアで政権による反対派への弾圧が強まり、政府軍や民兵によるとされる残虐な殺戮行為が伝えられ、人道を口実とした武力介入を促す声が再び、欧米諸国で聞こえてきます。だが、外国勢の武力介入は、本当に救いになるのか?
ヴィジャイ・プラシャドは、リビアへのNATO介入を検証し、その教訓をシリアへの対応にいかすべきだと論じます。リビアに対してNATO軍の介入に反対したロシアは、リビア攻撃を検証するように求めましたが、国連安保理は拒否したままです。空爆による民間人の犠牲者の実態も、現在の人権の状況も、ほおかむりされたまま。介入により人道が回復されたわけではなく、人権侵害が外部から見えなくなっただけではないのか?介入は内戦状態を悪化させ、暴力をさらにはびこらせてはいないのか?それぞれの利権をおくびにも出さず、人道を口実に、いかにも救い主になれるかのように紛争への対応を論じる、諸外国。シリアの危機を見据えながら、「人権侵害を理由に介入するのなら、介入による暴力行為の調査も怠ってはならない」という、アムネスティ・インターナショナルの正論をプラシャドは改めて打ち出します。(大竹秀子)
*ヴィジャイ・プラシャド(Vijay Prashad): トリニティ・カレッジの南アジア史教授。The Darker Nations: A People's History of the Third World (『暗黒国家:第三世界の民衆史』)ほか、著書多数。
字幕翻訳:大竹秀子/校正・サイト掲載:桜井まり子