経済学者J・スティグリッツ 米国主導の世銀・IMF体制に挑戦する新BRICS銀行に大喝采
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BRICSと呼ばれるブラジル・ロシア・インド・中国・南アの5カ国が今年7月、ブラジルのフォルタレザで首脳会議を開き、新たな開発銀行の設立を発表しました。世界の人口の4割、GDPの25%を占める巨大グループが、先進国にたよらない自前の開発銀行を創設したことは大きな話題となりました。元世銀主任エコノミストのジョセフ・スティグリッツに、この動きの重要性について聞きます。
BRICS銀行が歓迎される要因として、スティグリッツは3点を指摘しています。1)途上国を中心に世界の資金需要は急速に拡大しており、世界銀行やIMF(国際通貨基金)のような従来の国際金融機関の資金力では、そうした需要の数パーセントしか満たせない。2)グローバル経済のパワーバランスが大きく転換し、いまや新興経済が優位に立ちつつあるのに、世銀やIMFのような機関はいまだに米国が牛耳っている。3)世界経済の変化により新たなニーズが浮上しており、途上国の実情に合わせた多様で柔軟な融資が求められている。
一言でいえば、世銀やIMFなど旧来のシステムは非民主的なガバナンスのおかげで現実から遊離しており、もはや本当の需要のあるところに資金を供給することができないため、ついに後発国側から引導を渡された、ということになるのでしょう。この動画の続きの部分で、彼は古巣の世銀やIMFを猛烈に批判しています。そのほかにも、TPPへの批判や大企業の税金逃れなど興味深い話題を語っているので、字幕はありませんが、こちらもぜひ。
ウェブ限定の第二部 スティグリッツがBRICS銀行、TPP、企業の税金逃れを切る
3兆ドルを超える外貨準備を抱える中国が、米国債を購入するよりずっとましな資金の使い道を見つけた、というくだりは耳に痛いですね。中国の経済学者は米国債購入を「冷蔵庫に肉をしまって、電源を抜くようなもんだ」とけなしているそうですが、実質価値が目減りするだけの米国短期国債をせっせと買い集めている日本政府も同じです。ここらでひとつ大放出して円安に歯止めをかけてくれないもんでしょうか。(中野真紀子)
ジョセフ・スティグリッツ(Joseph Stiglitz)ノーベル賞受賞の経済学者。元世銀チーフエコノミストで現在はコロンビア大学教授。著書多数。2002年のベストセラー『世界を不幸にしたグローバリズムの正体』では、IMFやWTO、世界銀行などの国際機関の役割を批判的に評価した。
字幕翻訳:大竹秀子 / 校正:中野真紀子