ジョセフ・スティグリッツ クリントン候補に提言 「米国経済のルールを書き換えよう」
☆ この動画の字幕は、神戸女学院大学とソルボンヌ大学の両通訳翻訳コースの皆さんが合同授業で取り組んでくださった作品です。安倍首相もご意見を仰いだ経済学の世界的権威スティグリッツ教授のインタビューに挑戦。
早い時期からヒラリー・クリントン民主党大統領候補の経済政策顧問をつとめているジョセフ・スティグリッツ。昨年秋に出版されたRewriting the Rules of the American Economy: An Agenda for Growth and Shared Prosperity(『アメリカ経済のルールを書き換える 成長と共栄に向けた提言』)は、クリントン陣営の経済政策に影響を与えるだろうと注目されました。そこで語られているのは、現在の米国の経済は岐路を迎えており、過去30年あまり続いてきた実験が失敗したのは、もはや誰の目にも明らかである。レーガン政権の時代に始まった政策が、過度の富の集中によって需要を消滅させ経済自体を破壊している。この誤った政策がもたらした経済構造を転換させなければいけないということです。実際、バーニー・サンダースは格差の問題を中心に据えて大きな支持を集めましたが、ヒラリーもそれに押されて所得格差が経済全体をゆがませていると主張しています。スティグリッツ教授が期待する政策を詳しく聞いてみましょう。
スティグリッツ教授によれば格差拡大の最大の原因は、金融部門の肥大です。金融部門が米国のGDPに占める割合は1947年の2.5%から今では8%にまで拡大しましたが、経済成長にはまったく貢献しておらず、むしろバブルを発生させ経済の不安定化につながっています。ついには2008年のリーマンショックによって世界経済を危機に陥れました。金融セクターの規制が根本課題であると、スティグリッツ氏はさまざまな具体的提案を挙げていますが、心配なのはクリントン候補が金融業界から巨額の政治献金を受けていることです。
またTPPについても、あまりの評判の悪さに主要大統領候補はすべて反対を唱えており、ヒラリーも反対すると明言していますが、彼女の場合は当選したら態度を変えるのじゃないかという懸念がつきまといます。スティグリッツ教授はそのような懸念を否定していますが、当選のあかつきにはしっかり助言してもらいたいものです。(中野真紀子)
*ジョセフ・スティグリッツ(Joseph Stiglitz):ノーベル賞受賞の経済学者、コロンビア大学教授、リベラル系シンクタンク「ルーズベルト研究所」の主任エコノミスト。
字幕翻訳:神戸女学院大学大学院文学研究科通訳・翻訳コース + ソルボンヌ・ヌーヴェール=パリ第三大学/通訳翻訳高等学院 (ESIT)
全体監修:中野真紀子