メアリー・ロビンソン: 人権とジェンダーの平等が気候変動対策の根幹
12月10日は、世界人権宣言の採択を記念する世界人権デーです。2015年のこの日、パリでは、国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)が開催されていました。この動画では、現地パリから、国連で人権擁護の活動に従事した、元アイルランド大統領のメアリー・ロビンソン氏に、「人権問題としての気候変動問題」をテーマにインタビューします。
国連時代に目の当たりにした、アフリカの環境悪化による現地の人々への被害に触れながら、ロビンソン氏は、今後気候変動への対策を考える上で、人権問題がいかに中心的な課題となるかを訴えます。
また、気候変動におけるジェンダー間の平等性の観点にも言及しています。現在、気候変動に苦しむ途上国や最貧国で、多くの負担を強いられているのは女性です。しかし、今回のCOP21に集った面々からも明らかなように、国の政策を決定する指導者のうち、女性はごくわずかであるという問題があります。COP21で採択されたパリ協定についても、草案の段階で、ジェンダー間の平等性への言及を求める声がありましたが、一部の国々での思惑により、それを阻止する動きが見られました。
気候変動への具体的な対策について、ロビンソン氏は、化石燃料から再生可能エネルギーへの転換が重要だと主張します。現に各界では、化石燃料からの脱却に向けて、主体的な取り組みが見られています。例えば、ヴァージン・グループやプーマなど、世界の大企業の指導者たちが集う非営利団体「Bチーム」では、「2050年までに温室効果ガスの排出を正味ゼロにする」という革新的な目標が掲げられています。
「人権問題としての気候変動問題」を考えたとき、最大の被害者となっているのは、気候変動の主な要因を作り出した先進国ではなく、その煽りを受けた途上国や最貧国に暮らす人々です。そのような人々が不満を募らせて立ち上がり、ゆくゆくは先進国に牙を向けるという可能性も十分に考えられます。
先進国は、責任の所在を意識した上で、対岸の火事としてではなく、自国に関わる問題として現状を受け止める必要があります。ロビンソン氏が強調するように、「気候変動問題への対策は、慈善活動ではなく、先進国の義務である」という視点から、今後、気候変動問題に取り組んでいく必要があるでしょう。(東泉知佳)
* メアリー・ロビンソン(Mary Robinson):アイルランド共和国最初の女性大統領(1990-97)、国際連合人権高等弁務官(1997-2002)。現在はメアリー・ロビンソン気候正義基金を運営している。
字幕翻訳:朝日カルチャーセンター横浜 字幕講座チーム:
東泉知佳・千野菜保子・仲山さくら・山下仁美・山田奈津美・山根明子
/全体監修:中野真紀子