「地球温暖化に取り組まないのは、何億もの貧しい人々に死刑を宣告するようなもの」:英国の環境活動家が訴える環境問題の倫理的側面
地球の温暖化の問題は単に年間の平均気温が上昇するだけのことではなく、実際にそれによって多くの人命が失われるところまできています。国連の新事務局長潘基文は地球温暖化対策を国際社会が取り組むべき緊急課題だと明言しました。
グローバリゼーションや環境問題について多くの本を出しているイギリス「ガーディアン」紙のコラムニスト、ジョージ・モンビオ氏は最近『地球を冷ませ!――私たちの世界が燃えつきる前に』という本を出版しました。その中で彼が主張するのは、世界の科学者が主張する基準にそって、2030年までに温室効果ガスの60%削減を実現できれば、まだ地球を救う可能性は残っているということです。そのためには先進国の排出量を90%削減しなければなりませんが、それを実施するからといって、一部の人たちが心配しているように、自家用車の使用をあきらめたり、産業化社会を放棄することはなく、今人類が到達している技術を駆使することで十分に健全な地球を取り戻すことが出来るというのです。
問題は技術ではなくむしろ人間の倫理なのだと彼は指摘します。各国政府の政治的な思惑が、技術的には可能な温暖化対策を妨げているのです。地球温暖化の影響を受けにくい温帯にある先進国が温室ガスを大量排出しながら便利な生活を謳歌する一方で、南の貧困国では気候変化が起こす洪水や作物収穫量の減少によって人が死んでいっています。環境問題の救世主のように言われているバイオ燃料でさえ、本当は環境を破壊し、貧困国の人々の食物を奪うという皮肉な結果を招いています。モンビオ氏が私たちに呼びかけるのは、賢い消費者になることではなく、地球市民としての自覚を持ち、日々の行動一つ一つが世界にもたらす結果を意識する新しい倫理観を育てることです。 (石川)
★ DVD 2007年度 第3巻 「2007年8-9月」に収録
* ジョージ・モンビオ George Monbiot 『ガーディアン』(ロンドン)のコラムニスト。環境や政治問題の活動家、環境学者。著書多数。新刊は『地球を冷ませ!――私たちの世界が燃えつきる前に』(日本教文社から11月刊行予定)
字幕翻訳:石川麻矢子
全体監修:中野真紀子