軍事政権をうるおすフィジーウォーター

2009/9/3(Thu)
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20分

フィジーウォーターは米国の代表的な輸入ミネラルウォーターで、ボトル飲料として金持ちの有名人に人気があります。オバマ大統領は大統領選の夜、フィジーウォーターを飲んでいるところを写真に撮られていますし、メアリー・J. ブライジはコンサートの前に10本の注文を出すことも知られています。しかし最近、フィジーウォーター社の軍事独裁政権との癒着、同社の環境とのかかわり方、そしてそれがフィジー国民に及ぼす影響について警鐘を鳴らす記事がマザー・ジョーンズ誌に掲載されました。記事"Spin the Bottle"(「ボトルゲーム」)についてレポーターのアンナ・レンザーに話を聞きます。

フィジーウォーターの創業は1995年です。フィジーで発見された帯水層を米国の企業家がいち早く押さえ、フィジー政府と99年間のリース契約を結び、ボトル水の高級ブランドとして米国で売り出しました。今では総輸出額のおよそ2割を占めるフィジーの重要な輸出品です。国名を登録商標とするこのブランドは、フィジー政府と持ちつ持たれつの関係にあります。ボトルのデザインや広告が「穢れのない南の楽園フィジー」のイメージを売り込む一方、フィジー大使館は駐在地での市場開拓に便宜を図ります。

しかし現実のフィジーは軍の力が強く、1980年代から何度もクーデターを繰り返しています。現在の政府は2006年のクーデターで政権を握って以来、軍事独裁を敷いています。今年3月に実施するはずだった民政復帰のためも選挙を延期したため英連邦から除名処分を受けました。裁判所と対立して憲法を廃止し、非常事態宣言を発令してメディアも厳しく規制しています。フィジーウォーターの広告する楽園のイメージが、この軍政の正当化に貢献しているとレンザー記者は指摘します。

最近のフィジーウォーターのブランド戦略は「エコ」にシフトしています。「環境に優しい」水が売りで、フィジーウォーターの生産販売がCO2削減につながると宣伝しています。カーボン取引のシステムを利用し、フィジーの熱帯雨林に植林するなどの還元努力によってカーボン相殺率120%を達成し、ボトル1本ごとに2割のCO2が削減されると主張します。「一滴一滴がグリーン」なこの水を飲めば、あなたもエコになれるというわけです。しかしボトル水が地球環境にやさしいなんて、ほんとうでしょうか?同社にかぎらず、いんちき表示の横行する「ミネラルウォーター業界の闇」についても考えさせられます。(中野)

アンナ・レンザー(Anna Lenzer)
ネイション・インスティテュートから調査研究費の助成を受け、フィジーウォーターについて調査した。マザージョーンズに「フィジーウォーターのボトルゲーム」(“Fiji Water: Spin the Bottle”)を発表

参考URL
Fiji Water: Spin the Bottle
FIJI Water Responds to Mother Jones Article

Credits: 

字幕翻訳:小椋優子/校正:田中泉
全体監修:中野真紀子・付天斉