声なき人々の声、異なる見方を伝え、対話の架け橋をめざす独立報道機関アルジャジーラ

2010/3/31(Wed)
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31分
米国の主導でアフガニスタンに駐留するNATO(北大西洋条約機構)軍がカンダハルからタリバン勢力を一掃するための大攻勢を準備する中、中東カタールの衛星テレビ放送局アルジャジーラ放送局のワダーフ・ハンファル社長に話を聞きました。話題は、イラクやアフガニスタンの戦争情勢に始まり、米国の中東政策とアルジャジーラへの攻撃、多様な人々の声を映し出す独立メディアとしてのアルジャジーラの意義などに及びます。
アルジャジーラはカタールのドーハ本局からアラビア語と英語で放送しています。クアラルンプール、ロンドン、ワシントンDCなどに支局を置き、65カ国に特派員を派遣しており、全世界で視聴することができます。英語放送が始まったのは、2006年11月からで、視聴者は全世界で1億9千万人に達しています。ただし米国ではワシントンDCのケーブル局が放送している程度で、他は殆ど浸透していないそうです。
ハンファル氏はオバマ大統領の就任まで米国を訪れることはありませんでした。ブッシュ政権のもとで、アルジャジーラは米国の中東進出を邪魔する存在として敵視され,誹謗中傷されていたからです。アフガニスタンやイラクからの戦争の現地報道が危険視されたのです。アルジャジーラが伝える現地の人々野川から見た戦争の実態、中東の内部からの見方は、西側メディアや政治家の多くがけむたがり、口を封じようとする内容でした。
ブッシュ大統領にいたっては、アルジャジーラを爆撃したいと英国首相にもらしたこともあるそうです。さいわいパウエル国務長官などの穏健派が反対し、ドーハ本局が爆撃されることはありませんでしたが、カブールやバクダッドの支局は爆撃され、バクダッドではタリク・アユーブ特派員が亡くなりましたが、いまだに米国からの説明も謝罪もありません。
「アルジャジーラとは、声なき人たちの声、優勢な世論とは異なる意見を伝える独立報道機関です」と、ハンファル社長は言います。多面性を重んじ、さまざまな国民や文化の心を報道に反映し、 対話のかけ橋となることを使命とするアルジャジーラは、「ジャーナリズム」という職業が誕生したときの定義そのものを貫いているのだと。アラブ人の57%が信頼する放送局としてアルジャジーラを挙げるそうです。資本を出しているのはカタール政府ですが、編集方針にはいっさい干渉せず、カタールの外交政策からは完全に分離しているので、アラブの視聴者の信頼を得られるのだとハンファル氏は言います。
ハンファル氏は、パレスチナのジェニーンの出身です。2008年のイスラエルによるガザ侵攻の時、外国メディアとしては唯一イスラエル政府から取材許可を取り、この事件をガザの中からもイスラエル側からも報道しました。英語でもアラビア語でも双方の当事者を同時に見せ、戦争の真実を中継した、少なくともこの23年間で最も優秀な戦争報道だったと自負しています。(中野)
ワダーフ・ハンファル(Wadah Khanfar) カタールに本拠を置く国際放送局アルジャジーラの社長。 前回の出演 Democracy Now! in Doha…"Why Did You Want to Bomb Me Mr. Bush and Mr. Blair?": Al Jazeera Director Demands More Information on Secret Memo (2/3/2006)
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字幕翻訳:斉木裕明 校正・全体構成:中野真紀子