化学業界の圧力をかわしホルムアルデヒドを発がん物質リストに追加
ホルムアルデヒドがようやく、米国で既知の発がん物質リストに追加されました。この成果がいまとりわけ意義深いのは、保守系の大富豪であるコーク兄弟を初め、米保健社会福祉省に長年、圧力をかけてきた化学産業が、今回は敗れたからです。コーク兄弟は最近では、茶会党や、組合つぶしを行ったウィスコンシン州知事への資金援助なども含め、巨額な資金で政界に大きな影響力をふるっている人物で、コーク社の子会社であるジョージア・パシフィック社は、米国最大のホルムアルデヒド生産企業の一つです。兄弟は、ホルムアルデヒドが発がん性物質リスト入りするのを防ぐためのロビー活動を主導してきました。ホルムアルデヒドはプラスチックの中に含まれるほか、ベニヤ板やパーティクルボードなどで多く使われています。米保健社会福祉省がその圧力に屈しなかったのは、朗報です。政府はまた、船や浴槽、そして使い捨ての発砲プラチックのカップや皿に使われるスチレンも発がん性の恐れがあることも発表しました。
ところで、このセグメントにも登場する、「4つの犬の弁護」が、面白い。化学業界が有害化学物質の弁護に使う常套的なレトリックなのだそうです。有害物質の被害を犬にかまれた被害にたとえてこう説明します。飼い犬にかまれたと非難されたら、企業はまず、こう応えます。「飼い犬などいませんよ」。嘘がばれたら、次はこうです。「犬は飼ってますが、あなたを噛んだりしてません」。これもだめなら、「噛みましたがね。怪我はないじゃないですか」。そして、最後のきわめつけは、「あなたが怪我をしたのは確かです。でも、そうなったのは、あなたのせいです。」このレトリック、日本でも放射能汚染にも関連して、これからますます耳にすることになりそうだ。(大竹秀子)
*ジェニファー・サス(Jennifer Sass): 天然資源保護協議会の上級科学研究員
*ホアキン・サピエン(Joaquin Sapien): 環境問題を得意とするプロプブリカ記者
字幕翻訳:大竹秀子/全体監修:中野真紀子/サイト作成:丸山紀一朗