新生リビアを取り巻く環境と課題
2011年8月23日、リビア反政府勢力は、カダフィ側の施設に攻撃を加え、制圧に成功しました。カダフィ氏の所在は不明でしたが、首都トリポリの制圧によって、事実上カダフィ政権は崩壊しました。これを受けて、番組特派員のアンジャリ・カマトがリビア取材の報告をします。加えて、コロンビア大学マフムード・マムダニ教授が辛口のコメントをします。
カマトが取材したのはリビア3大都市ベンガジ、ミスラタ、首都トリポリです。トリポリはカダフィ政権の拠点が制圧されたとあって、リビアの解放を祝う人々であふれていたといいます。しかしリビアは難題をいくつも抱えています。まずとてつもない量の武器が拡散したこと。体制転覆で結束していた反体制派ですが、彼らは国際社会から暫定政府として認知された国民評議会だけではなく、さまざまな背景の勢力が混在しています。武装した彼らと国民評議会の均衡が図れるのかどうか。それにも増して、カダフィを支持していた人々との宥和という大問題があります。さらにリビアの黒人は、サハラ以南から来たカダフィ側の傭兵と間違えられて反体制派に虐待され、人種間の亀裂も深まりました。しかしカマトは、このような難題を抱えてはいても、リビア人の解放への歓喜は大きく、外国の介入をはねつけていくだろうと言います。
マムダニ教授はそれに対し、リビアの政変を一気に進めたのはNATO軍の空爆だと釘をさします。リビアは分裂国家であり、強力な自国軍をもつ独裁者が長期政権を維持しているという点でアフリカの典型的な国です。このような国の反体制派は、現体制を転覆するためなら外国の軍事介入でも大歓迎であり、このことがアフリカの軍事化を招くとマムダニは危惧を表明します。
その後NATOはカダフィ殺害をもってリビアの軍事作戦を終了すると述べましたが、アフリカの軍事化拡大への懸念は言われ続けています。(桜井まり子)
*アンジャリ・カマト(AnJali Kamat):独立ジャーナリストでデモクラシー・ナウ!特派員。リビアでの取材を終えて出演。
*マフムード・マムダニ(Mahmood Mamdani):ウガンダのマケレレ大学・NYコロンビア大学教授。著書にSaviors and Survivors: Darfur, Politics, and the War on Terror(『救う者と生き残る者 ダルフールと政治とテロとの戦い』『良いムスリムと悪いムスリム 米国と冷戦とテロの根源』など。
字幕:桜井まり子/全体監修:中野真紀子/サイト作成:丸山紀一朗