グアテマラ次期大統領オットー・ペレス・モリーナの過去
昨年11月の決選投票で当選した現グアテマラ大統領オットー・ペレス・モリーナは、1986年に軍事独裁が終了して以来始めての軍人出身の大統領です。グアテマラでは麻薬密輸組織がからむ暴力事件が横行して治安が悪化しており、これに対して「鉄拳」をふるうという公約を掲げた退役将校のペレス・モリーナが支持を広げ、対抗馬の一人だったマヤ先住民活動家でノーベル平和賞受賞者のリゴベルタ・メンチュウは緒戦で大敗しました。しかしペレス・モリーナには暗い過去があります。1980年代にグアテマラで猖獗を極めた軍政府による組織的な自国民の拉致、拷問と集団虐殺に直接関与した人物として人権団体から告発されているのです。
グアテマラでは1950年代に民主化改革が進みましたが、ハコボ・アルベンス大統領の土地改革が米国のユナイテッド・フルーツ社(現チキータ社)の資産に及ぶと米国が内政干渉に乗り出し、1954年に軍上層部と組んでアルベンス政権を転覆させ親米独裁政権を建てました。その結果グアテマラは60年代から内乱状態に陥り、36年にわたりゲリラ戦争の時代が続きました。特に80年代初期には反対制派弾圧が頂点に達し、おびただしい数の行方不明者、拷問や虐殺が行われ、先住民集落の焦土作戦などの人権蹂躙が行われました。当時軍将校だったペレス・モリーナは、焦土作戦や拷問を指揮したとされます。
決選投票前の時点で、人権弁護士のジェニファー・ハーベリーに話を聞きます。ジェニファーの夫で共産主義ゲリラの指導者だったエフライン・バマカ・ベラスケスは、グアテマラ軍により、1992年に拷問のすえ殺されました。(中野真紀子)
*ジェニファー・ハーベリー(Jennifer Harbury) 人権弁護士。Searching for Everardo: A Story of Love, War, and the CIA in Guatemala(『エベラルドを探して:グアテマラの愛と戦争とCIAの物語』)の著者。
字幕翻訳:小田原琳/校正:斉木裕明
全体監修:中野真紀子/サイト作成:丸山紀一朗