暴露 スノーデンが私に託したファイル ~(4)既存メディアには現状を変えられない

2014/5/14(Wed)
Video No.: 
5
11分

グレン・グリーンウォルドへの長時間インタビューの締めくくりとして、ピュリツァー賞の受賞についての感想や米国の既成ジャーナリズムについての考えを聞きます。スノーデンの内部告発を徹底して報道したことに対しては、当時のNSA長官キース・アレグザンダーが「人命を危険にさらした」と厳しく非難しましたが、グレンにとっては権力者の怒りを買うことは「ジャーナリストとしての勲章」です。ところが暴露記事が続々と発表されるにつれ、同業者であるジャーナリストたちまで敵対的な態度を取るようになりました。「これはもはやジャーナリズムではない」と言うのです。彼らのジャーナリズムとは、どんなものなのでしょう?

先の動画でグレンが指摘しているのは、体制側のメディアには政府を揺るがす重大な告発を扱うにあたって暗黙のルールが存在することです。「大量の機密資料を入手したら、とりあえず1本か2本の記事を書き、生の資料は見せません。その裏では政府にかけあい、報道してよい範囲はどこまでか細かく交渉し、政府の指示を仰ぎます。それに従って数本の記事を報道し、本当の痛手を与える前に手を引いてしまいます。それでも大いに賞賛され、賞をもらう。現状をなにも変えないまま、これぞ本物のジャーナリズムだと自慢することができる仕組みです」。

まさに、どこの国でも体制側のメディアはこのようなものでしょう。彼らのいう本物のジャーナリズムは、情報のコントロールに他なりません。この掟を無視するグレンたちの個人名がピュリツァー賞に出てこないことには、選考委員会のそれなりの苦肉の策なのかも。本当に変化を起こそうとするならば、内部告発の受け皿となる新しいメディアが必要です。グレンたちが創設したThe Interceptが、その役割を果たすことが期待されます。(中野真紀子)

☆ このセグメントはクラウドファンディングが成立したおかげで字幕をつけることができました。スポンサーになっていただいた皆さんに、心から感謝を申し上げます。 応援コメントも沢山いただきました

グレン・グリーンウォルド(Glenn Greenwald)ピュリツァー賞受賞のジャーナリスト。新著は『暴露 スノーデンが私に託したファイル』。

Credits: 

字幕翻訳:川上奈緒子 / 校正:中野真紀子